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御宿の岩の井のこと

千葉県御宿、サーファーや海水浴客で賑わう町中から一本奥まった場所では、
大きな藁葺き屋根が目印の岩瀬酒蔵さんで「岩の井」が醸造されています。
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300年以上の歴史を持つこの母屋は、
どっしりとした迫力とホッとするあたたかさを併せ持ち、失礼ながら自分には、
岩の井の味わいと、寡黙で温和なご当主を思わせる佇まいのように映ってなりません。

古くから庄屋であった岩瀬酒造さんが、酒造りを始めたのは享保8年(1723年)頃。
昭和5年(1930年)からは先駆け的に吟醸造りを研究し、
その成果として、昭和22年(1947年)全国清酒鑑評会首席の実績を残し、
他の酒蔵が技術ある吟醸蔵として、参考にする程の名声を得ています。
その後も昭和61年(1986年)東京サミットの乾杯酒に選出、
平成11年(1999年)には、長く岩の井を醸し続けてきた前杜氏の菊池さんが、
現代の名工に選ばれるなど実直な酒造りが引き継がれています。

現在の造りの大半は山廃仕込みで行われていて、
酸や旨味、お酒の輪郭がはっきりとした味わいが特徴的に思えます。
貝殻層を通って汲み上げられる仕込み水は、カルシウムやカリウムが多く含まれた硬水。
一般的に硬水で仕込んだお酒は発酵を促し、
厚みのあるしっかりとした酒質を持つと言われます。
男酒なんて言い方もしますが、これも岩の井の魅力です。

もう一つの蔵の特徴は、昭和40年頃から本格的に貯蔵を開始した古酒。
山廃由来の充分な酸を、旨味や複雑味に変えた重厚な古酒と、
しっかりとした理念によって誕生する、上品で滑らかな大吟醸古酒の二通りがあります。
御宿の岩の井のこと_d0233324_043024.jpg

画像は昭和51年(1976年)醸造の大吟醸古酒。
JALの国際線ファーストクラスでも、代表的な日本酒としてサービスされていた物です。
自分が初めて味わった古酒もこの岩の井大吟醸古酒。
軽やかながら練れた旨味と、静かに残る吟醸香に圧倒された事を今も良く覚えています。

それと忘れられないのは、以前お酒の学校の引率で訪問した際に
岩の井と一緒にご馳走になった鰯のつみれ汁。
自分にとっての岩の井は、日本酒の美味しさは勿論、外房の鰯の美味しさと
古酒の魅力を教えてくれたとても意味深いお酒でもあるのです。

by chibanokoto | 2012-05-02 00:07 | 最近体験した●●●のこと  

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